一般建築物部門 最優秀賞作品選評 (審査委員 戸塚 学)
横浜の北郊の台地に位置する桐蔭学園は、坂道を登り学園全体の正面玄関となる、
メインアプローチにメモリアルアカデミウムを配置している。
この設計のコンセプトは、周辺の緑豊かな樹林や大樹のヒマラヤ杉並木との自然環
境と、調和を図るために施設の大部分を地下に設置し、地上での建物の存在を抑制す
る事である。
全体の配置計画は建物の中央部に、地上へ吹抜けの地下1階から地下2階に至る階
段状の大きな中庭を設け、その囲りに各機能を有する施設を複合化・一体化の配置を
してある。
建物の表現としてエントランスは、高さ約10m程度の丸柱群と横並びの透明なガ
ラスの壁面、そうして大きく前方にせり出す軽快な屋根により、知の殿堂としての重
みの中で未知への挑戦と飛躍の躍動を感じる。視線を奥に向けると外部を遮る壁は僅
少の上、中庭を覆う屋根は開閉自在となり、1階から地下の中庭を含めた建築空間は、
周辺の自然環境に連動する開放感あふれる大きな空間を形成する。この空間を抜け各
施設を訪れると、内部は珪土系の薄茶色によるポーラス状の壁仕上等により、歴史感
の漂う落着のある重厚感に満ちた空間へ変わる。
2階に進むと憩いの水辺となる野外テラスでは、さざ波による静寂な陰陽に揺らぐ
池の向こうに横浜北郊の地、その奥に連なる丹沢の山々、遥かな富士の容姿が一望の
無限に広がる風景により、感性が増幅し施設をより魅力的にしている。
この建物は横浜地方裁判所に設置の陪審法廷の移築・復元が発端と聞いている。
現在、我が国で実存するこの法廷は、2件のみで、正に歴史的遺産と言える。復元
は雰囲気の忠実な再現のため、家具の細かい箇所まで配慮し、その場に立つと戦前か
ら戦後に至る重い歴史の移り変わりを感じさせられる。
この建物は周辺の自然環境と、巧みな調和に成功の見事な作品である。